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がんの手術を受けた後、足がパンパンに腫れてしまった。
そんな経験をされている患者さまは、決して少なくありません。靴が履けない、歩くたびに重さを感じる、夕方になると足首が見えなくなる——これらはすべて、術後のむくみが引き起こす症状です。
むくみの原因はひとつではありません。リンパ浮腫、栄養不足、長期臥床による血流低下など、複数の要因が絡み合っています。原因を正しく理解し、適切なケアを続けることが、症状の改善と生活の質の向上につながります。
この記事では、がん術後に起こる足のむくみの原因と対処法を、形成外科・リンパ浮腫専門医の立場から詳しく解説します。患者さまとご家族が安心して日常生活を送れるよう、具体的な情報をお届けします。
ななほしクリニック|大阪府堺市・初芝駅徒歩すぐ
がん術後の足のむくみでお悩みの方へ。リンパ浮腫の専門的なケアについて、専門医が丁寧にご説明します。一人ひとりの状態に合わせたサポートをご提案いたします。
診療時間:月〜火・木〜金 9:00〜19:00 水・土 9:00〜16:00 日曜定休
がん術後に足のむくみが起きる主な原因
術後のむくみには、いくつかの異なるメカニズムがあります。
まず最も重要なのが、リンパ浮腫です。がん治療においてリンパ節を摘出したり、放射線療法を行ったりすると、リンパ管やリンパ節が損傷します。その結果、リンパ液が正常に流れなくなり、体内に滞留して手足にむくみが生じます。特に乳がん・婦人科系がん(子宮がん・卵巣がん)・前立腺がんの治療後に多く見られます。

次に挙げられるのが、低栄養によるむくみです。がん治療中は食欲低下や消化吸収障害が起きやすく、血液中のタンパク質(アルブミン)が不足します。アルブミンには血管内に水分を保持する働きがあるため、不足すると水分が血管外へ漏れ出し、むくみが生じます。
また、長期臥床による血流低下も見逃せません。手術後に安静を保つ期間が長くなると、ふくらはぎの筋肉ポンプが働かなくなり、静脈血やリンパ液が下肢に滞留しやすくなります。
さらに、薬剤の副作用もむくみの原因になります。化学療法や一部の支持療法薬には、体内の水分バランスを乱す作用があるものがあります。
リンパ浮腫と一般的なむくみの違い
リンパ浮腫は、一般的なむくみとは性質が異なります。
一般的なむくみは、長時間の立ち仕事や塩分の摂り過ぎなどで起こり、一晩休めば改善することが多いです。一方、リンパ浮腫は放置すると進行し、不可逆的なむくみになる可能性があります。皮膚が硬くなる「象皮症」や、細菌感染による「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」を引き起こすリスクもあります。
「少し休めば治るだろう」と様子を見ているうちに、症状が進行してしまうケースがあります。術後に足のむくみが続く場合は、早めに専門医を受診することが大切です。
リンパ浮腫が起きやすいがんの種類
- 乳がん:腋窩リンパ節郭清後に上肢のリンパ浮腫が起きやすい
- 子宮がん・卵巣がん:骨盤内リンパ節郭清後に下肢のリンパ浮腫が起きやすい
- 前立腺がん:骨盤内リンパ節郭清後に下肢のリンパ浮腫が起きやすい
リンパ浮腫は、治療後すぐに発症することもあれば、10年以上経過してから発症することもあります。術後は長期にわたって注意が必要です。
リンパ浮腫の症状と進行ステージ
早期発見が、その後の治療成績を大きく左右します。
リンパ浮腫の初期症状として、足や手の一部がむくんだり、重さや張りを感じることがあります。「なんとなく足が重い」「靴下の跡がいつもより深く残る」といった些細な変化が、リンパ浮腫のサインである場合があります。

症状が進行すると、以下のような変化が見られます。
- むくみが持続し、朝になっても改善しない
- 皮膚が硬くなり、つまみにくくなる(皮膚の硬直)
- 皮膚の色や質感が変化する
- 蜂窩織炎(皮膚の感染症)を繰り返す
リンパ浮腫の部分はバリア機能が低下しているため、虫刺されや小さな傷からも感染が起きやすくなります。腕や脚全体に炎症が広がることもあるため、スキンケアには特に注意が必要です。
こんな症状があれば要注意
以下の症状が1つでも当てはまる場合は、早めに専門医へご相談ください。
- 術後から足のむくみが続いている
- 片足だけがむくんでいる
- むくんでいる部分の皮膚が硬くなってきた
- むくみとともに皮膚が赤くなったり、熱を持ったりする
- むくみが徐々に悪化している
特に「片側だけのむくみ」は、リンパ浮腫の特徴的なサインです。両足ではなく片足だけが腫れている場合は、リンパ浮腫の可能性が高いと考えられます。
日常生活でできるむくみの予防と対処法
日々の積み重ねが、むくみの改善につながります。
リンパ浮腫の予防・進行を抑えるには、日常的なケアが重要です。ただし、神経質になりすぎることは逆効果です。無理のない範囲で、以下のケアを継続しましょう。
スキンケアで感染を防ぐ
リンパ浮腫の部分は皮膚のバリア機能が低下しているため、丁寧なスキンケアが欠かせません。
- 肌を清潔に保ち、石鹸はよく泡立てて使う
- 保湿で乾燥を防ぐ
- すり傷・切り傷・虫刺されに気を付ける
- 熱いものを持つ際は手袋を使用し、やけどを防ぐ
- 長袖や日傘で皮膚を紫外線から守る
- 体を締め付けない、ゆったりとした衣類や靴下を選ぶ
日常生活での工夫
生活習慣の見直しも、むくみの改善に効果的です。
- 腕や脚を心臓より高くして休む(挙上)
- 重いものを持たない
- 疲れが残るような激しい運動は避け、適度な運動を行う
- 長時間同じ姿勢をとらない
- 標準体重を維持する(肥満はリンパ液の流れを悪くします)
- 買い物の際はキャリーバッグやショッピングカートを活用する
「重い荷物を宅配で送る」「無理に立ち仕事を続けない」など、体への負担を減らす工夫が大切です。
適度な運動でリンパの流れを促す
リンパ管には、血液を全身に送るための心臓のようなポンプ機能がありません。
そのため、リンパ管周囲の筋肉に圧をかけること、そして運動によって筋肉を動かすことでリンパ液を流す必要があります。弾性着衣や弾性包帯で圧迫した状態での運動療法は、リンパ浮腫を悪化させることなく、むくみのある腕や脚の運動機能の向上が見込めるとされています。ウォーキングや軽いストレッチなど、無理のない範囲で体を動かすことを心がけましょう。
むくみの症状、一人で抱え込まないでください
リンパ浮腫の状態や程度は人によって異なります。まずは専門医にご相談の上、ご自身に合ったケアの方向性を確認されることをおすすめします。
お電話:072-288-6170 月〜金 9:00〜19:00(水は〜16:00)
医療機関で受けられるリンパ浮腫の治療法

症状が続く場合は、専門的な治療が必要です。
リンパ浮腫の治療は、複数の治療法を組み合わせた集学的治療が効果的です。日常生活のケアだけでは改善が難しい場合、医療機関での治療を積極的に検討しましょう。
用手的リンパドレナージ
用手的リンパドレナージとは、専門の技術者が皮膚を優しくさすることで、腕や脚に溜まったリンパ液を正常なリンパ節へと誘導する医療的マッサージです。
通常のマッサージや美容目的のリンパドレナージとは異なります。専門の医療機関で治療を受けることが重要です。
圧迫療法(弾性ストッキング・バンデージ)
圧迫療法は、弾性ストッキングや包帯などで皮膚を圧迫することで、むくみの軽減につなげる方法です。用手的リンパドレナージと圧迫療法を組み合わせることで、体液が再び溜まるのを防ぐ効果が期待できます。
一般的に、症状が軽い場合は弾性着衣を、症状が重い場合は弾性包帯を使用します。弾性着衣の購入は保険適応となっており、6ヶ月ごとに保険を利用できます。
LVA(リンパ管静脈吻合術)
LVA(リンパ管静脈吻合術)とは、微小なリンパ管と静脈をつなぎ、リンパ液の流れを改善する手術です。
最新の顕微鏡技術を用いて精密かつ短時間での手術が可能であり、日帰りで行うことができます。圧迫療法やリンパドレナージと組み合わせることで、より高い治療効果が期待できます。LVA手術は保険適応の治療です。詳細は医療機関にご確認ください。
ななほしクリニックのリンパ浮腫専門治療
大阪府堺市の初芝駅前にあるななほしクリニックでは、リンパ浮腫の専門治療に力を入れています。
院長の久米川は、和歌山県立医科大学附属病院で形成外科医として勤務した経験を持ち、リンパ浮腫治療を専門としています。乳がんや婦人科系がん、前立腺がんの治療後に生じるリンパ浮腫に対して、患者さまお一人おひとりに最適な治療を提供しています。
高周波エコーによる精密診断

当院では、まず視診と触診でむくみの程度や皮膚の状態を確認します。その後、高周波エコーを用いたリンパ管の質的診断を実施しています。これにより、リンパ管の状態を正確かつ即座に把握し、最適な治療方針を立てることが可能です。必要に応じて造影検査などの追加検査も行います。
日帰りLVA手術と集学的治療
当院の治療の中心は、日帰りで行えるLVA(リンパ管静脈吻合術)です。国内製の最高倍率の顕微鏡を使用した精密な手術を実施しており、手術の前後にリンパ管の状態を詳細に評価します。
LVAに加えて、圧迫療法(弾性ストッキング・バンデージ)とリンパドレナージを組み合わせた集学的治療を提供しています。また、近隣クリニックとの連携治療を強化しており、手術後のフォローアップやリハビリテーションもスムーズに受けていただける体制を整えています。
保険適応の治療内容
- 弾性着衣の購入(6ヶ月ごと):保険適応
- 定期健診:保険適応
- LVA手術(リンパ管静脈吻合術):保険適応
なお、当院に導入しているリンパ浮腫治療器(リミティ)は自費治療となります。具体的な費用については、直接クリニックへお問い合わせください。
むくみを悪化させないために知っておきたいこと
知識が、症状の進行を防ぐ最大の武器です。
リンパ浮腫は、適切なケアを続けることで症状の進行を抑え、生活の質を維持することが可能です。しかし、いくつかの行動がむくみを悪化させるリスクがあります。
避けるべき行動・環境
- 長時間の飛行機搭乗や長距離移動(同じ姿勢の継続)
- サウナや長時間の入浴など、過度な加熱
- 患肢への採血・血圧測定・注射(可能な限り健側で行う)
- きつい靴や締め付けの強い靴下・ストッキング
- 急激な体重増加
「術後だから無理しないようにしている」という患者さまでも、気づかないうちにリンパ浮腫を悪化させる行動をとっていることがあります。担当医や専門スタッフに日常生活の注意点を確認することをお勧めします。
精神的なサポートも大切に
むくみは、身体的な苦痛だけでなく、精神的なストレスや生活の質の低下をもたらすことがあります。
「足が腫れていて人前に出るのが恥ずかしい」「治療が長引いて気持ちが沈む」——そうした気持ちを抱えている患者さまは多くいらっしゃいます。一人で抱え込まず、医療スタッフや家族に相談しながら治療を続けることが大切です。
まとめ:早期受診と継続ケアが回復への近道
がん術後の足のむくみは、放置すると悪化します。
リンパ浮腫は早期に発見し、適切な治療とケアを継続することで、症状の進行を防ぎ、生活の質を向上させることができます。日常生活でのスキンケアや適度な運動、圧迫療法などを組み合わせながら、専門医のサポートのもとで治療を進めることが重要です。
「足のむくみが気になる」「術後からずっとむくみが続いている」という方は、ぜひ一度専門医にご相談ください。早めの受診が、その後の回復を大きく左右します。
ななほしクリニックでは、リンパ浮腫でお悩みの方に対して、一人ひとりに最適な治療を提供しています。高周波エコーによる精密診断から日帰りLVA手術まで、専門的な治療体制を整えています。ネット予約も可能ですので、お気軽にご相談ください。
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大阪府堺市西区鶴田町315-1(初芝駅徒歩すぐ)
著者情報
院長
久米川 真治(くめがわ しんじ)

経歴
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2015年3月 |
和歌山県立医科大学医学部 卒業 |
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2015年4月 |
和歌山県立医科大学付属病院 |
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2017年4月 |
和歌山県立医科大学形成外科 学内助教 |
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2022年7月 |
和歌山県立医科大学形成外科 助教 |
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2023年3月 |
医学博士 取得 |
資格
- 日本形成外科学会専門医
- 臨床研修指導医(厚生労働省)
- 医学博士
- リンパ浮腫保険診療医
- 弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター
所属学会
- 日本形成外科学会
- 日本フットケア・足病医学会
- 日本リンパ浮腫治療学会
- 日本リンパ浮腫学会
- 日本美容皮膚科学会





