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顔の赤みが気になって、メイクで隠しきれないとお悩みの方は少なくありません。
特に頬や鼻のまわりが常に赤く見える状態は、「赤ら顔」と呼ばれ、さまざまな原因が考えられます。中でも毛細血管が拡張して目立つ「毛細血管拡張症」は、放置しても自然には治らないことが多く、適切な治療が必要です。
この記事では、形成外科・美容皮膚科の専門医として、血管拡張による赤ら顔の発症メカニズムから最新のレーザー治療まで、わかりやすく解説いたします。赤ら顔でお悩みの方が、適切な治療選択をするための参考にしていただければ幸いです。
赤ら顔とは?血管拡張が引き起こす症状
赤ら顔とは、顔の毛細血管が拡張して目立ち、常に頬や鼻のまわりが赤く見える状態のことです。
当初は「肌が敏感」「すぐ赤くなる」程度に感じられることもありますが、時間が経つと赤みが慢性化し、毛細血管の浮き出しが顕著になることがあります。火照りなどの症状を引き起こす可能性もあるため、早めの対応が大切です。
赤ら顔には、酒さ、毛細血管拡張症、酒さ様皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、炎症後紅斑(ニキビ後の赤みなど)、接触性皮膚炎などが含まれます。それぞれ原因や治療法が異なるため、正確な診断が重要になります。

毛細血管拡張症の主な症状
毛細血管拡張症は、皮膚の真皮層にある毛細血管が異常に拡張し、その形が皮膚表面から透けて見える状態を指します。
主な症状は、皮膚に現れる赤みです。その見え方によって、以下のようなタイプに分けられます。
- 線状・樹枝状・・・1本の線のように見えたり、木の枝のように枝分かれして見えたりします。小鼻の脇や頬によく見られます。
- クモの巣状・・・中心に赤い点があり、そこから放射状に細い血管が広がります。太ももなどにも見られることがあります。
- 丘疹状・・・赤い小さな盛り上がり(丘疹)が見られます。
- びまん性・・・特定の形はなく、頬全体などがぼんやりと赤くなります。いわゆる「赤ら顔」の状態です。
顔の頬や鼻、あご周りをはじめ、脚(太ももやふくらはぎ)など、体のさまざまな部位に現れる可能性があります。
毛細血管拡張症と酒さの違い
毛細血管拡張症と酒さは、どちらも顔にできることが多い疾患ですが、それぞれ特徴や自覚症状が異なります。
毛細血管拡張症は、基本的に自覚症状がなく、痛みやかゆみを感じることはほとんどありません。ニキビのような凹凸もなく、赤みだけがある状態です。一方、酒さは、ヒリヒリ感やかゆみなどの自覚症状があり、ニキビのような症状も見られます。肌がでこぼこになったり、自覚症状がある場合には酒さの可能性も考えられます。
毛細血管拡張症は、自然には治らない疾患であり、酒さは改善する場合があるものの、すぐに治ることはほとんどありません。そのため、赤みや自覚症状がすぐになくなってしまった場合には、まったく別の疾患にかかっている可能性もあります。
血管拡張による赤ら顔の原因とメカニズム
赤ら顔の原因は一つではなく、複数の要素が絡み合っています。
ここでは、血管拡張を引き起こす主な要因について解説します。
体質・遺伝的要因
もともと毛細血管が拡張しやすい体質の方がいらっしゃいます。
皮膚が薄く、色が白い方は、血管が透けて見えやすい傾向があります。また、遺伝的な素因がある方も発症しやすいとされています。女性に発症することが多く、女性ホルモンが配合された薬の服用時にも起こりやすくなると言われています。そのため、女性ホルモンバランスの影響による発症も考えられています。
外的刺激・環境要因
日常生活におけるさまざまな刺激が、血管拡張の原因となることがあります。
- 寒暖差・・・冬の外気と室内の暖房差など、激しい温度差は血管の収縮・拡張を繰り返し、結果的に拡張したまま戻らなくなることがあります。
- 紫外線・・・長年紫外線を浴び続けると、皮膚や血管の壁がダメージを受け、血管が拡張しやすくなります。
- アルコールや香辛料の摂取・・・刺激物の摂取により、血管が拡張しやすくなります。
- 強い洗顔や乾燥・・・過度なマッサージや洗浄力の強いクレンジングは、肌への刺激となり症状を悪化させる可能性があります。
ホルモンバランスの乱れ
更年期や月経周期による女性ホルモンの変動も、血管拡張に影響を与えることがあります。
妊娠によるホルモンバランスの変化により、一時的に血管が拡張しやすくなることもあります。
ステロイド外用薬の長期使用
ステロイド外用薬の長期使用により、皮膚が菲薄化し、毛細血管が目立つようになる「酒さ様皮膚炎」のリスクがあります。
副作用として皮膚が薄くなったり(皮膚萎縮)、血管が拡張したりすることがあるため、注意が必要です。
レーザー治療が赤ら顔に効果的な理由
赤ら顔の根本的な原因は、スキンケア製品が届く肌の表面(表皮)ではなく、その奥にある真皮層の毛細血管にあります。
化粧水や美容液は、肌の保湿やバリア機能のサポートが主な目的であり、広がってしまった血管そのものをなくすことはできません。そのため、真皮層の毛細血管にアプローチして改善するには、美容医療でのアプローチが重要です。
レーザー治療の基本原理
レーザー治療では、肌の赤みの原因となっている「毛細血管」に直接アプローチします。
レーザーには、血液の中にある赤い色素(ヘモグロビン)にだけ反応する性質があり、その部分にピンポイントで熱を加えることで、広がりすぎた血管をしっかりと処理することができます。このとき、まわりの正常な皮膚にはほとんどダメージを与えず、必要な部分だけを選んで治療できるのが大きな特徴です。
処理された血管は時間とともに体の中で自然に吸収されていくため、赤みも少しずつ目立たなくなっていきます。
選択的光熱融解理論
レーザーによる治療の基本的なメカニズムは「選択的光熱融解理論」に基づいています。
この理論では、特定の波長のレーザー光が標的組織(この場合は血管やヘモグロビン)にのみ選択的に吸収され、周囲の正常な組織への損傷を最小限に抑えながら治療効果を得ることができます。レーザー光が血管内のヘモグロビンに吸収されると、光エネルギーが熱エネルギーに変換されます。この熱により血管壁が凝固し、血管が収縮または閉塞します。拡張していた毛細血管が閉塞することで、皮膚表面に透けて見えていた赤みが改善されるという仕組みです。

赤ら顔治療に使用される主なレーザーの種類
赤ら顔の治療に用いられるレーザーには、いくつか種類があります。
それぞれに特徴や効果の出やすい赤みのタイプがあり、「自分にはどちらが合っているのか?」という判断は、赤ら顔の原因や肌状態によっても変わってきます。
Vビームレーザー(色素レーザー)
Vビームレーザーは、ヘモグロビンへの吸収率が高い色素レーザーです。
顔の赤み全般に効果があり、医師が「毛細血管拡張症」と診断した場合、Vビームによるレーザー治療は保険適用となります。赤あざ・赤ら顔治療で5回以上、毛細血管拡張症は頬については早くて1回、数回程度の施術が必要です。ヘモグロビン(血液の赤い成分)に反応して、拡張した毛細血管を選択的に破壊します。4週間以上の間隔で複数回照射することで、徐々に赤みが改善します。
ロングパルスYAGレーザー
ロングパルスYAGレーザーは、深くまで達するレーザーです。
小鼻のしっかりとした血管拡張や、下肢の静脈瘤の治療に用いられます。ヘモグロビンへの吸収率はVビームよりは穏やかですが、Vビームよりもマイルドな作用のため、回数が必要になることが多いです。
IPL光治療(Intense Pulsed Light)
IPL光治療は、赤ら顔だけでなく、くすみ・しみ・毛穴の開きなど、肌全体のトーンアップにも効果がある治療です。
赤ら顔と同時に肌質も改善します。ダウンタイムはレーザーと比べると少ない治療です。自由診療となります。
レーザー治療の流れとダウンタイム
レーザー治療を受ける際の一般的な流れをご説明します。
治療の流れ
- 診察・カウンセリング・・・医師が肌の状態を診察し、赤ら顔の原因を特定します。治療方法や回数、費用について詳しくご説明します。
- 治療前の準備・・・メイクを落とし、治療部位を清潔にします。必要に応じて麻酔クリームを塗布します。
- レーザー照射・・・冷却システムを併用しながら、レーザーを照射します。照射時間は治療範囲によって異なりますが、通常10〜30分程度です。
- 治療後のケア・・・冷却パックで肌を落ち着かせ、保湿と紫外線対策を行います。
ダウンタイムと副作用
レーザー治療後のダウンタイムは、治療の種類によって異なります。
Vビームレーザーの場合、一時的な照射後の顔のむくみ、約1週間ほどの紫斑形成(軽度の皮下出血)を認めることがあります。IPL光治療の場合は、ダウンタイムが少なく、治療直後からメイクが可能です。皮膚の赤みやほてり感が数時間〜数日続くことがありますが、通常は自然に治まります。

治療回数と期間の目安
レーザー治療の効果は、個人差がありますが、通常は複数回の照射が必要です。
Vビームレーザーの場合、通常は2〜4回程度の照射をしていくことで徐々に赤みが薄れていきます。毛細血管拡張症は頬については早くて1回、数回程度で改善が見られることもあります。IPL光治療の場合は、3〜5回程度の施術が推奨されます。
治療の間隔は、通常4週間以上空けることが推奨されます。肌の回復期間を確保し、治療効果を最大化するためです。
赤ら顔治療におけるスキンケアのポイント
レーザー治療と並行して、日常のスキンケアも重要です。
紫外線対策の徹底
紫外線は血管拡張を悪化させる大きな要因です。
日焼け止めを毎日使用し、帽子や日傘などで物理的に紫外線をブロックすることが大切です。レーザー治療後は特に紫外線に敏感になるため、徹底した対策が必要です。
刺激の少ないスキンケア製品の選択
刺激の少ないスキンケアを選びましょう。
アルコールや香料、防腐剤などの刺激成分が少ない製品を選ぶことが推奨されます。洗顔は優しく行い、ゴシゴシこすらないように注意しましょう。
保湿の重要性
肌のバリア機能を保つために、十分な保湿が必要です。
セラミドやヒアルロン酸などの保湿成分が配合されたスキンケア製品を使用し、肌の水分を保ちましょう。乾燥は血管拡張を悪化させる要因となるため、特に注意が必要です。
まとめ
血管拡張による赤ら顔は、放置しても自然には治らないことが多く、適切な治療が必要です。
レーザー治療は、真皮層の毛細血管に直接アプローチし、根本的な改善が期待できる治療法です。Vビームレーザーは保険適用となる場合もあり、IPL光治療は赤ら顔と同時に肌質改善も期待できます。治療の種類や回数は、赤ら顔の原因や肌状態によって異なるため、専門医による診察とカウンセリングが重要です。
日常のスキンケアでは、紫外線対策、刺激の少ない製品の選択、十分な保湿を心がけることが大切です。
「いつも頬が赤い」「メイクで隠しきれない顔の赤みが気になる」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度専門医にご相談ください。適切な診断と治療により、赤ら顔の改善が期待できます。
著者
久米川 真治(くめかわ しんじ) 医師
ななほしクリニック 院長

形成外科・皮膚科・美容皮膚科を専門とする医師。
保険診療から自費診療まで幅広い臨床経験を有し、形成外科専門医として、疾患の正確な診断と患者負担の少ない治療を重視した診療を行っている。
本サイトでは、医師としての臨床経験と医学的根拠に基づき、症状・治療法・注意点について、一般の方にも理解しやすい医療情報の発信を行っている。





