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顔の赤みやほてりが続いていて、化粧水をつけるとヒリヒリする・・・そんな悩みを抱えていませんか。
皮膚科で湿疹と診断されて塗り薬を使っているのに、なかなか良くならない。
それは「酒さ様皮膚炎」という皮膚の病気かもしれません。
酒さ様皮膚炎は、ステロイド外用薬を長期間使用することで起こる副作用の一つです。顔の赤みやブツブツ、かゆみやヒリヒリ感などの症状が現れ、日常生活に支障をきたすこともあります。診断が難しく、適切な治療を受けられずに悩んでいる方も少なくありません。
酒さ様皮膚炎とは何か
酒さ様皮膚炎は、顔面にステロイド外用剤を長期にわたって使用した結果として生じる皮膚疾患です。
「酒さ」という別の皮膚疾患と症状が似ているため、このような名前がつけられています。
主な症状としては、顔面の赤みやほてり、かゆみ、ヒリヒリした刺激感、ニキビのようなブツブツ、毛細血管拡張症などが挙げられます。口の周りに症状が集中する場合は「口囲皮膚炎」と呼ばれることもあります。

症状が現れる部位は、主に鼻下やアゴなどの口周りです。これは酒さとの大きな違いで、酒さでは顔の中心に近い鼻や頬の内側、眉間などに症状が出やすい傾向があります。
酒さ様皮膚炎は、アルコールの摂取量とは関係がありません。「酒」という字が入っているため誤解されやすいのですが、実際には薬剤の使用が原因となる皮膚疾患です。
酒さ様皮膚炎の主な原因
ステロイド外用薬の長期使用
酒さ様皮膚炎の最も大きな原因は、ステロイド外用薬を長期間にわたって使用することです。
ステロイドは脂溶性のため、皮脂腺が多い顔は吸収率が高くなります。そのため、顔に使用すると副作用が出やすくなるのです。
ステロイドを漫然と使い続けると、皮膚の細胞増殖が抑制されて皮膚が薄くなります。その結果、皮膚の下にある血管が拡張して浮き出て見えるようになり、赤みが目立つようになります。
タクロリムス軟膏の使用
ステロイドと同様に、免疫抑制剤であるタクロリムス軟膏(商品名:プロトピック)を長期間外用することでも、酒さ様皮膚炎の症状が出ることがあります。
タクロリムス軟膏は非ステロイド薬として使用されますが、長期使用には注意が必要です。
その他の要因
油脂性の化粧品をきっかけにして症状が出ることもあります。
また、すべての方に必ず起こる副作用ではなく、体質が関係していると考えられています。1週間外用するだけでも酒さ様皮膚炎になってしまう方もいらっしゃいます。
酒さ様皮膚炎と酒さの違い
酒さ様皮膚炎と酒さは、症状が似ているため混同されやすい疾患です。
しかし、原因や症状が現れる部位に違いがあります。
酒さ様皮膚炎は、ステロイド外用薬の不適切な長期使用が主な原因です。症状は口囲や鼻の周りなど、薬剤を塗布した部位に現れます。治療では原因薬剤の中止と炎症抑制治療が必要で、リバウンドを伴うことがあります。
酒さは、原因が不明で、体質やニキビダニ、血管拡張などが関係していると考えられています。症状は顔面中央部(頬、鼻、額)に現れやすく、赤み・ほてりが主体で、ブツブツを伴うこともあります。
診断が難しく、適切な治療を受けるためには、皮膚科専門医による正確な診断が重要です。
酒さ様皮膚炎の診断方法
問診による情報収集
診察では、まず詳しい問診を行います。
「症状はいつから出ているのか」「どこに症状が見られるのか」「症状に変化はあるのか」「ステロイドやタクロリムスの外用薬の使用歴」など、症状や体調について細かく聞き取ります。
病気を特定するための大切な手がかりとなりますので、気になることがあればご相談ください。
視診による確認
患部の症状や出ている部位を実際に目で確認します。
症状が出ている範囲や、赤みやポツポツなどの特徴的な症状が出ているかをチェックします。
検査による鑑別
必要時には拡大鏡(ダーモスコピー)を使った検査で、毛細血管拡張症の症状が出ているかを確認します。
また、他の病気と区別するために、顕微鏡検査をすることもあります。酒さとの鑑別や、脂漏性皮膚炎など他の皮膚疾患との見分けも治療のうえで非常に重要になります。

酒さ様皮膚炎の治療法
原因薬物の中止とリバウンド対策
治療の第一歩は、原因となるステロイド外用剤の使用を中止することです。
しかし、突然やめると「リバウンド現象」と呼ばれる一時的な症状の増悪が起こることがあります。
リバウンド現象では、原因薬物を中止してから3日を目安に、赤みやほてり、むくみ、乾燥、ジュクジュク感、皮膚がはがれるなどの症状が起こります。これらは14日ほどをピークとして、緩やかにおさまり、6週間を過ぎるとほとんどの場合で症状がおさまります。
リバウンド現象が強く出ているときには、ステロイドの使用量や使用回数を少しずつ減らしたり、アレルギー反応を抑えるために内服薬を処方したりするなどの方法で対応します。
外用薬による治療
皮膚の炎症が目立っているときには、塗り薬としてメトロニダゾール(商品名:ロゼックス)を処方します。
メトロニダゾールには、活性酸素を抑える働きや免疫反応を抑制する働きがあり、慢性的な皮膚の炎症に役立ちます。1日1〜2回、患部を洗浄してから適量を塗布してください。
内服薬による治療
毛穴の炎症を抑えて、ブツブツを減らすために、抗炎症作用があるテトラサイクリン系の抗菌薬であるドキシサイクリン(商品名:ビブラマイシン)を処方します。
1日1回100mg錠または1日2回50mg錠を食後に服用してください。炎症を抑えるためには、短期間の服用では効果を実感しにくくなります。最低でも2週間、長いときには3か月ほどの連続服用が必要です。
抗ヒスタミン剤の内服を併用することもあります。
日常生活でのスキンケアと注意点
肌への負担を減らすスキンケア
酒さ様皮膚炎の症状を悪化させないためには、肌への負担をできるだけ減らすことが大切です。
洗顔の際は、ゴシゴシ強くこすり過ぎないように注意しましょう。肌質に合った低刺激性の洗顔料を選び、優しく洗うことが重要です。
保湿剤の選択にも注意が必要です。ヘパリン類似物質(ヒルドイドやビーソフテンなど)は肌の血流を良くする効果があり、赤ら顔が悪化してしまうことがあります。赤みが気になる方は、セラミドが入った保湿剤がおすすめです。

避けるべき成分と製品
AHA(フルーツ酸)やサリチル酸などのピーリング成分にも注意が必要です。これらの成分は角質のバリアを弱くしてしまい、肌に赤みが出ることがあります。
アルコール配合のスキンケア製品も避けた方が良いでしょう。
レチノールやニキビ薬も、肌状態によっては刺激となる可能性があります。
紫外線対策の重要性
紫外線は皮膚症状を悪化させることがあります。
日頃から日焼け止めや帽子、日傘などで紫外線を避けることが大切です。日焼け止めは低刺激性のものを選びましょう。
生活習慣の見直し
激しい運動や飲酒、辛いものを食べることは、顔の血流を増やし、赤みやほてりを悪化させる可能性があります。
寒暖差の激しい環境やストレスも、症状を悪化させる要因となります。できるだけ避けるように心がけましょう。
治療中の経過と注意すべきこと
酒さ様皮膚炎の治療では、リバウンド現象が起こることを理解しておくことが重要です。
症状が一時的に悪化しても、それは治療の過程で起こる正常な反応です。自己判断で治療を中断せず、医師の指示に従って治療を続けることが大切です。
治療効果を実感するまでには時間がかかることもあります。焦らず、根気強く治療を続けましょう。
症状が改善しない場合や、新たな症状が現れた場合は、すぐに医師に相談してください。

まとめ
酒さ様皮膚炎は、ステロイド外用薬の長期使用によって起こる皮膚疾患です。
顔の赤みやほてり、かゆみ、ヒリヒリ感などの症状が現れ、日常生活に支障をきたすこともあります。
治療の基本は、原因となる薬剤の使用を中止し、適切な外用薬や内服薬で炎症を抑えることです。リバウンド現象が起こることもありますが、医師の指示に従って治療を続けることが重要です。
日常生活では、肌への負担を減らすスキンケアや紫外線対策、生活習慣の見直しが大切です。
自己判断で誤った対応をすると、症状が悪化する可能性があります。気になる症状がある場合は、必ず皮膚科を受診しましょう。
ななほしクリニックでは、酒さ様皮膚炎をはじめとする様々な皮膚疾患の診療を行っております。お一人おひとりの症状に合わせた適切な治療をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。
著者
久米川 真治(くめかわ しんじ) 医師
ななほしクリニック 院長

形成外科・皮膚科・美容皮膚科を専門とする医師。
保険診療から自費診療まで幅広い臨床経験を有し、形成外科専門医として、疾患の正確な診断と患者負担の少ない治療を重視した診療を行っている。
本サイトでは、医師としての臨床経験と医学的根拠に基づき、症状・治療法・注意点について、一般の方にも理解しやすい医療情報の発信を行っている。




