皮膚・皮下腫瘍、脂肪腫
皮膚・皮下腫瘍、脂肪腫
皮膚・皮下腫瘍とは皮膚や皮膚の下にできる腫瘍のこと、軟部腫瘍とは皮下組織(軟部組織)に出来る腫瘍のことを指し良性と悪性があります。
良性腫瘍には、脂肪腫、粉瘤(アテローム)、血管腫などが含まれ、通常は痛みやかゆみが少なく、ゆっくりと成長します。一方、悪性腫瘍には、基底細胞がん・悪性黒色腫などの皮膚がんや脂肪肉腫などがあり、急速に増大したり、色が変わったり、出血を伴うことがあります。皮膚や皮下にしこりができた場合、早期発見と治療が重要です。
粉瘤(表皮脳腫・アテローム)は袋状の組織が皮膚の下にでき、そこに垢や皮脂といった老廃物がたまったものです。はじめはあまり目立たず、触れると小さなしこりがあるように感じます。サイズが大きくなったり、独特の臭いを生じるようになったり、細菌感染などにより炎症を起こすことがあります(炎症性粉瘤)。
粉瘤は袋状になった腫瘍であるため、袋状になった組織を完全に除去しない限り治すことができません。また、膿を出そうとして圧迫すると、袋が破れて脂肪組織内に散らばり慢性化してしまうこともありますので、内容物を無理に排出することは避けてください。
皮膚には常に様々な常在菌がおり、人間はその細菌と常に生活しています。常在菌は他の細菌から我々を守ってくれるためにも存在しており、日ごろ問題を起こすことはありません。しかし、粉瘤の中で細菌が爆発的に増えると、人の生体防御反応が働き炎症が起きます。また腫瘍から周囲に老廃物が漏れ出すための異物反応により炎症が起きるとも考えられています。元々は小さな粉瘤であっても、何倍にも腫れあがり、痛みを伴った症状を起こします。炎症の程度は様々ですが、脇に出来た場合には腕を挙げられないほど痛くなったり、症状を放っておくと、全身に細菌がまわり発熱したりする場合もあります。炎症が長引くと、自壊した後の組織は色素沈着を残し、瘢痕となります。
そのため炎症を長引かせずに早期に治療を行い、炎症を早期に抑えることが術後の創部のためには重要となります。
脂漏性角化症は、皮膚に発生する良性の腫瘍の一つで、主に加齢によって生じることから、「老人性いぼ」や「加齢性いぼ」として知られています。30代頃から見られることがありますが、年齢を重ねるにつれて発生する頻度が高まり、高齢者ではほぼ全員に何らかの形で現れると言われています。顔、首、胸、背中など、皮脂腺が活発な部位に多く見られ、見た目は茶色や黒色をしており、表面がざらざらしているものや、平らで滑らかなものまで様々です。しばしば「皮膚に貼り付いたような」外観を持ち、目立つ場合や触れるとやや硬いと感じることがあります。
脂漏性角化症の正確な原因はまだ解明されていませんが、加齢が主な要因とされており、紫外線や遺伝的要素が影響を与える可能性も指摘されています。この状態は通常、痛みやかゆみといった症状を伴うことはありません。しかし、見た目の問題や衣服との摩擦による炎症が気になる場合、治療を希望される方もいらっしゃいます。治療方法としては、CO2レーザーによる蒸散治療、または外科的切除があり、それぞれの方法は症状や患者さまのご希望に応じて選択します。脂漏性角化症そのものは良性で、健康に直接的な悪影響を及ぼすことはありませんが、美容的な観点で気になる方はぜひご相談ください。
色素性母斑は、一般的に「ほくろ」と呼ばれるもので、皮膚における色素異常の一種です。皮膚の中にあるメラニン色素を含む母斑細胞が局所的に集まることで形成され、生まれつき存在する場合もあれば、成長過程で現れることもあります。誰にでもできる非常に一般的なもので、形状や大きさ、色合いは様々です。平らで皮膚と同じ高さにあるものから、盛り上がりのあるものまで、その外観は一人ひとり異なります。
通常、色素性母斑は無害で、特別な症状を引き起こすことはありません。
治療については、美容的な観点や悪性化のリスクを排除する目的で行われます。方法としては、CO2レーザーを用いて色素を破壊し目立たなくする治療や、切除による完全な除去があります。必ず病理検査を行い、悪性の有無を確認します。問題がないと診断された場合には、定期的な経過観察のみで対応することもあります。
皮膚がやわらかくて薄い首や脇、ももの付け根などにできやすいイボで感染性ではありません。ザラっとした手触りの皮膚腫瘍で、衣類やアクセサリーが引っかかる、チクチクするなどの感触があります。引っかかって傷付くと炎症を起こすこともあります。
治療は、専用のハサミによる切除などの治療法があります。平坦で盛り上がりがなくピンセットでつまめないものは、自費治療になりますがレーザーによる除去が可能です。
脂肪腫は、皮下に発生する軟部組織の腫瘍の中では最も多くみられる良性腫瘍です。
脂肪を蓄えた細胞が増えてできるのですが、現在のところ詳しい原因はわかりません。
単発性腫瘍ですが、稀に多発することがあります。発生時期は幼少時と考えられていますが、緩徐に発育するため発見は遅く、20歳以下には稀に、40~50歳代に多く見られます。男女比は報告により一定しませんが、女性に多いとされ、肥満者に多いとも言われています。身体の各部に発生しますが、背部、肩、頸部などに多く、次いで上腕、臀部、大腿などの体に近い方の四肢に多くみられます。顔面、頭皮、下腿、足などは比較的稀です。大きさは数㎜の小さなものから、直径が10センチ以上に及ぶものまでいろいろです。通常痛みなどの症状はなく、皮膚がドーム状に盛り上がり、やわらかいしこりとして触れます。良性腫瘍ではありますが、大きなものの中には悪性のものも含まれるため、病理検査を行います。自然になくなることはなく、手術によって摘出する必要があります。徐々に大きくなるため、早めの手術をおすすめします。診断に関しては臨床症状と画像検査を行います。画像検査にはエコー検査、MRI検査がありますが、当院では詳細に検討を行うために提携クリニックにて当日MRI検査を行います。手術に関しては局所麻酔下で摘出させていただきます。
「皮膚がん」は皮膚にできる悪性腫瘍の総称です。主な皮膚がんには、「Bowen病」「基底細胞がん」「有棘細胞がん」「悪性黒色腫(メラノーマ)」などが挙げられます。
皮膚がんは、内臓のがんと違って目で見えるため比較的早期で発見しやすいです。そのためにはどのような見た目のものががんの可能性があるのか、あるいはどのタイミングで医療機関を受診すべきかなどを知っておくことはとても大切です。
悪性腫瘍かどうか不安な場合は、腫瘍の一部を検査に出すことで確定診断を行うことが出来ます。場合によっては、完全切除することで完治が望める悪性腫瘍もありますのでなるべく早く受診してください。