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しみ治療における誤診のリスク
しみの治療を考えたとき、多くの方が「レーザーを当てれば消える」と思われるかもしれません。
しかし実際には、しみには複数の種類があり、それぞれに適した治療法が異なります。誤った診断のもとで治療を受けると、かえってしみが濃くなったり、肌が荒れたりする可能性があるのです。
形成外科医として、私はこれまで多くの患者さまの肌を診てきました。その中で、他院での治療後に悪化してしまったケースを何度も目にしてきました。適切な診断と治療選択がいかに重要か、日々実感しています。
この記事では、しみの誤診を防ぎ、安全で効果的な治療を受けるために知っておくべきポイントを、形成外科専門医の視点から詳しく解説します。
しみの種類と見分け方
しみと一口に言っても、その種類は多岐にわたります。
主なものとして、老人性色素斑、肝斑、そばかす(雀卵斑)、後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)、炎症後色素沈着などがあります。これらは見た目が似ていることもあり、正確な診断には専門的な知識と経験が必要です。
老人性色素斑(日光性色素斑)
老人性色素斑は、30代以降に現れることが多い、紫外線によるしみの代表格です。
顔や手の甲、腕など、日光によくあたる部分にできる茶色いしみで、境界が明瞭で均一な色調が特徴です。形は円形から類円形で、大きさは様々ですが、最も多く見られるしみの種類といえます。
長期にわたる紫外線の影響で、表皮のメラノサイトからメラニン生成が促され、ターンオーバーの低下によってメラニンが貯留することで形成されます。
肝斑(かんぱん)
肝斑は、30代から60代の女性に多く見られるしみです。
頬や眼の下、額などに左右対称にぼんやりと広がる薄茶色の色素斑が特徴で、まぶたを避けるように現れます。ホルモンバランスの崩れと関係しており、妊娠や経口避妊薬の使用、紫外線などが発症や悪化の要因となります。
肝斑は刺激に非常に敏感で、不適切なレーザー治療を行うと悪化するリスクが高いため、慎重な診断と治療選択が求められます。
そばかす(雀卵斑)
そばかすは、幼少期から思春期にかけて発症することが多いしみです。
鼻を中心に両頬、額、唇周囲など左右対称に散らばる茶色の小さなシミで、1つずつのシミは1~5mm大でほぼ均等に並びます。遺伝的な体質と紫外線によって発症すると考えられており、色白の方に多く見られる傾向があります。
日焼けや妊娠により数やサイズ、深さが増悪することがあるため、紫外線対策が重要です。
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)
ADMは、しみではなく「あざ」の一種です。
20代から30代の女性の顔面、特に頬骨部や額、鼻翼部などに左右対称に現れる、やや青みや灰色を帯びた褐色の色素斑が特徴です。直径1~3mm程度の点状の色素斑が、いくつかまとまって見られます。
肝斑やそばかすと見た目が似ているため誤診されやすく、また肝斑と合併しているケースもあります。真皮層にメラノサイトが存在するため、通常のしみとは異なる治療アプローチが必要です。
炎症後色素沈着
炎症後色素沈着は、ニキビ跡やアトピー性皮膚炎、傷跡、レーザー治療後などに生じる色素沈着です。
やや赤みを帯びた褐色斑で、表面はざらざらしていません。よくこすれる部位にできやすく、時間の経過とともに自然に薄くなることもありますが、適切なケアで改善を早めることができます。
誤診が起こりやすい理由
なぜしみの誤診が起こるのでしょうか。
最も大きな理由は、複数の種類のしみが混在しているケースが多いことです。たとえば、肝斑の上に老人性色素斑が重なっていたり、ADMとそばかすが同時に存在していたりすることがあります。

また、肝斑の診断は特に難しく、専門的な知識と経験が必要です。肝斑を見逃してレーザー治療を行うと、かえってしみが濃くなってしまうリスクがあります。
さらに、診断機器の不足や、医師の経験不足も誤診の原因となります。ダーモスコピー(拡大鏡)などの専門機器を用いた詳細な観察や、皮膚の構造を深く理解した診断が求められます。
形成外科医としての私の経験から言えば、肌の構造や治療反応性、炎症リスクを熟知した医師による診断が、誤診を防ぐ最も確実な方法です。
誤診による治療の悪化例
誤診による治療の悪化は、決して珍しいことではありません。
最も多いのが、肝斑を老人性色素斑と誤診し、強いレーザー治療を行ってしまうケースです。肝斑は刺激に弱く、強いレーザーを照射すると数カ月間にわたってかえって濃くなってしまうことがあります。
また、ADMをそばかすや老人性色素斑と誤診し、弱い治療法を続けてしまうケースもあります。ADMは真皮層のあざであるため、適切なレーザー治療(Qスイッチルビーレーザーなど)が必要ですが、弱い治療では効果が出ず、時間と費用だけが無駄になってしまいます。
逆に、単なる老人性色素斑を肝斑の疑いがあると判断し、弱い治療法(トーニング、フォトフェイシャルなど)や内服薬だけで様子を見る方針をとった結果、一年経っても濃いしみが残ったままというケースも見られます。
これらの悪化例は、正確な診断がいかに重要かを物語っています。
正しい診断を受けるためのポイント
では、正しい診断を受けるためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
形成外科専門医や皮膚科専門医を選ぶ
まず、日本形成外科学会認定の形成外科専門医や、日本皮膚科学会認定の皮膚科専門医の資格を持つ医師を選ぶことが重要です。
これらの専門医は、肌の構造や疾患に関する深い知識と豊富な経験を持っており、正確な診断と適切な治療選択ができる可能性が高くなります。

丁寧なカウンセリングを行うクリニックを選ぶ
診断には、十分な時間をかけた丁寧なカウンセリングが不可欠です。
しみの種類や状態を詳しく説明し、治療のメリットとリスクを誠実に伝えてくれるクリニックを選びましょう。過度な治療を勧めず、今必要な治療だけを提案してくれる医師は信頼できます。
複数の診断機器を備えたクリニックを選ぶ
ダーモスコピーなどの専門機器を用いた詳細な診断を行っているクリニックは、より正確な診断が期待できます。
また、複数の治療機器を備えているクリニックは、しみの種類に応じて最適な治療法を選択できるため、安心です。
セカンドオピニオンを検討する
診断や治療方針に不安がある場合は、別のクリニックでセカンドオピニオンを受けることも有効です。
複数の専門医の意見を聞くことで、より確実な診断と治療選択ができるようになります。
しみの種類別の適切な治療法
しみの種類によって、適切な治療法は大きく異なります。
老人性色素斑の治療
老人性色素斑には、Qスイッチルビーレーザーやピコレーザーなどのスポット照射が効果的です。
これらのレーザーは、メラニン色素を含む組織だけを選択的に破壊することで、しみを除去します。治療後は炎症後色素沈着が生じることがありますが、適切なアフターケアで改善できます。
また、ハイドロキノンやコウジ酸などの外用薬を併用することで、より高い効果が期待できます。
肝斑の治療
肝斑には、刺激の少ない治療法を選ぶことが重要です。
トラネキサム酸やビタミンCの内服、ハイドロキノンなどの外用薬、低出力のレーザートーニングやIPL(光治療)などが用いられます。強いレーザー治療は避け、段階的に改善を目指すアプローチが基本です。
肝斑の治療には時間がかかることが多いため、根気強く続けることが大切です。
そばかすの治療
そばかすには、Qスイッチルビーレーザーを使ったレーザーシャワーや、IPL(光治療)が効果的です。
治療で一旦薄くなった後も、紫外線対策や定期的なメンテナンスが重要です。遺伝的な要素が強いため、完全に消すことは難しい場合もありますが、目立たなくすることは可能です。
ADMの治療
ADMには、Qスイッチルビーレーザーなどの強力なレーザー治療が必要です。
約3カ月に1回、合計2~3回のレーザー照射を計画的に行うことで、根本的な改善を目指します。シミとは異なり、レーザー照射後から改善まで数カ月を要しますが、最終的にはほぼ完全にあざが消失することが多い、予後良好な病変です。
炎症後色素沈着の治療
炎症後色素沈着には、まず炎症を抑えることが優先されます。
ハイドロキノンやコウジ酸の外用薬、ビタミンCの内服、ケミカルピーリングなどが用いられます。時間の経過とともに自然に薄くなることも多いため、焦らず適切なケアを続けることが大切です。
ななほしクリニックでの診断と治療
私が院長を務めるななほしクリニックでは、形成外科と皮膚科のダブル専門性を活かした、正確な診断と最適な治療を提供しています。
しみの種類を正確に診断するため、、肌の構造・治療反応性・炎症リスクを熟知した医師が、レーザーが適切なのか、薬剤治療が必要なのか、まず炎症を抑えるべきなのかを一人ひとりに合わせて判断します。
治療機器も、Qスイッチルビーレーザー(NanoStar R)、IPL、ケミカルピーリング各種、外用薬など、豊富に取り揃えています。特にADMに対しては、Qスイッチルビーで2~3回の計画的治療により根本改善を目指しています。
また、リンパ浮腫治療を専門とする形成外科医としての知識を美容領域にも応用し、炎症後色素沈着やダウンタイム管理、むくみやすい体質など、肌状態が不安定な患者さまにも安全性を確保した美容治療を行える点が特徴です。
カウンセリングから治療計画、施術後のケアまで医師が必ず関わり、過度な治療や不必要な負担を避けながら、確実な改善を目指します。
治療後のケアと再発予防
しみ治療は、施術を受けて終わりではありません。
治療後の適切なケアと、再発を防ぐための日常的な対策が、美しい肌を長く保つために不可欠です。
治療直後のケア
レーザー治療後は、照射部位に保護テープを貼り、紫外線や摩擦から守ることが重要です。
また、炎症後色素沈着を防ぐため、ハイドロキノンなどの外用薬を使用することがあります。医師の指示に従い、丁寧にケアを続けましょう。
紫外線対策の徹底
しみの再発を防ぐには、紫外線対策が最も重要です。
日焼け止めを毎日使用し、帽子や日傘なども活用しましょう。特に治療後の肌は敏感になっているため、より一層の注意が必要です。
スキンケア習慣の見直し
日々のスキンケアも、しみの予防と改善に大きく影響します。
ビタミンC誘導体などの美容成分を含むドクターズコスメを使用することで、肌のターンオーバーを促進し、メラニンの排出を助けることができます。
また、肌をこすりすぎないよう、優しく丁寧なケアを心がけましょう。

定期的なメンテナンス
しみは一度治療しても、紫外線やホルモンバランスの変化などで再発することがあります。
定期的にクリニックでメンテナンス治療を受けることで、美しい肌を長く保つことができます。医師と相談しながら、自分に合ったメンテナンスプランを立てましょう。
まとめ
しみの治療において、正確な診断は何よりも重要です。
肝斑、ADM、老人性色素斑など、しみの種類によって適切な治療法は大きく異なり、誤った治療は悪化のリスクを伴います。形成外科専門医や皮膚科専門医による丁寧な診断と、一人ひとりに合わせた治療選択が、安全で効果的なしみ治療の鍵となります。
ななほしクリニックでは、形成外科と皮膚科のダブル専門性を活かし、正確な診断と最適な治療を提供しています。しみでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたの肌に最適な治療法を、一緒に見つけていきましょう。
美しい肌を取り戻し、自信を持って毎日を過ごせるよう、全力でサポートいたします。
著者
久米川 真治(くめかわ しんじ) 医師
ななほしクリニック 院長

形成外科・皮膚科・美容皮膚科を専門とする医師。
保険診療から自費診療まで幅広い臨床経験を有し、形成外科専門医として、疾患の正確な診断と患者負担の少ない治療を重視した診療を行っている。
本サイトでは、医師としての臨床経験と医学的根拠に基づき、症状・治療法・注意点について、一般の方にも理解しやすい医療情報の発信を行っている。




